塩漬けとは、含み損になったポジションを損切りせず、そのまま保有し続けることです。
なぜ、ポジションを保有し続けるのでしょうか。それは、為替レートが復活して、含み損が解消するかもしれないからです。
損失を確定してしまうと、為替レートが復活しても、損は消えません。
そこで、塩漬けによるポジション保有は効果的なのか、あるいは愚策なのかを確認していきます。
FXにおける塩漬けの効果と考察
株式投資の場合、塩漬けになった株は二度と利食いできないかのようなイメージがあります。しかし、FXの場合は異なります。塩漬けは、一定の効果があります。
チャートを見ながら考察しましょう。
一定の効果を確認した後、「それでも塩漬けは止めた方がいいよ」という視点も考察します。
塩漬けによるスワップポイントへの期待度(米ドル/円の例)
下は、米ドル/円の長期チャートです(FXプライムbyGMOから引用)。赤数字1は、2006年~2007年くらいですから、リーマンショック前の高値付近です。
ここで、運悪く買ってしまったとしましょう。しかも、絶対に損切りしたくないという方針です。

2007年以降の大幅下落で、米ドル/円は80円割れにまでなりました。それでも約8年間頑張っていれば、2015年には円安になり、利食いできました(矢印)。
しかし、必ずしも利食いできるとは限りません。例えば、赤数字2で買ってしまった場合です。あまりに円安の位置で買うと、厳しいです。
そこで、できるだけ円高の位置で買いたいです。
しかし、仮に円安部分で買ってしまったとしても、あきらめる必要はありません。スワップポイントがあるからです。
スワップポイントがあれば、塩漬けは(ある程度)何とかなる
円を売って外貨を買う場合、毎日のスワップポイントはプラスになることが多いです。また、長期保有する場合、スワップポイントがマイナスだと苦痛の日々になります。
というわけで、塩漬けで長期保有するポジションは、スワップポイントがプラスになっているでしょう。
これが強力です。
下のグラフは、「くりっく365」で米ドル/円を1万通貨買って保有した場合の、1か月間のスワップポイントの大きさをグラフ化したものです。

2007年までは、1万通貨持つだけで、毎月4,000円くらいの収入がありました。しかし、リーマンショック後は、毎月1,000円にも満たない額だと分かります。
2016年から再び増加傾向にありましたが、2020年の新型コロナウイルス問題を受けて、再びゼロ近くまで落ち込んでいます。
ここで重要なのは、「様々な危機を経ているにも関わらず、多くの期間で、毎月のスワップポイントがプラスだった」という事実です。
含み損があっても、スワップポイントでカバーすれば問題ありません。含み損よりも大きな額を得れば、損益合計はプラスになります。
塩漬け効果の検証(試算)
ここで、トレードの試算をしてみましょう。対象とするのは、以下の通貨ペアです。
- 米ドル/円
- 豪ドル/円
- トルコリラ/円
米ドル/円を塩漬けした場合
2005年7月1日に、くりっく365で米ドル/円を1万通貨買ったとします。その日の終値は、111円60銭でした。そして、何があってもずっとポジションを保有し続けたとしましょう。
すると、2020年5月末日までのスワップポイント合計は、255,671円になります。
この金額が意味する内容ですが、「買値から25.5円だけ円高になっても、損益合計はプラスである」ということです(10,000円の収入=為替レート1円相当)。
買値 :111円60銭
損益分岐点:86.10円弱(評価損が255,671円となる為替レート)
月別スワップポイントのグラフで分かります通り、スワップポイントがほとんどつかないという期間もありました。しかも、年単位で。
それにもかかわらず、損益分岐点は86.10円よりも下にあります。86.10円よりも円安の時に売れば、勝ちトレードになります。
トレード結果
為替差損益:マイナス
スワップ:大幅プラス
合計:プラスで勝ち
FXの場合、年単位で待てるなら、塩漬けになっても悪くないと分かります。
とんでもない円安水準で買わず、長期的な視点で見れば、FXでプラスの成績を上げること自体は、難しくないのかもしれません。
豪ドル/円を塩漬けした場合
次に、豪ドル/円を見てみましょう。長期チャートは、下の通りです。

米ドル/円よりも、分かりやすい形をしています。値動きの下限は50円台半ばであり、上限は108円です。
ということは、この範囲の円高部分で買って放置すれば、自然と利食いできるのでは?と予想できます。
仮に、90円周辺の為替レートで買ってしまったとしても、時間さえ経過すれば何とかなる!ように見えます。豪ドル/円についても、月別スワップポイント益の推移を確認しましょう。

2005年7月1日に、くりっく365で1万通貨買って、そのままポジションを持ち続けた場合、2020年5月31日までのスワップポイント益の合計は、423,160円でした。
すなわち、購入レートから42.3円も円高になったとしても、このトレードの成績はプラスです。
為替レートの損益分岐点
2005年7月31日終値:84.00円
2020年5月31日の損益分岐点:41.70円くらい
過去の円高記録は、55円くらいです。そして、41.7円になっても、トレード成績はプラスです。
塩漬けなのに、トレードの勝者となりました。スワップポイントが継続的にプラスなら、塩漬けは悪くない選択肢です(とはいえ、少しでも安く買いたいです)。
トルコリラ/円を塩漬けした場合
では、長期保有で考えるなら、スワップポイントが高ければ良いのか?ですが、そういうわけではありません。
これを考えるために、トルコリラ/円の長期チャートを見てみましょう。

良く見れば、円安になっている期間もあります。しかし、概ね円高一辺倒という値動きです。この場合、スワップポイントの支援があっても、プラスの成績にするのは大変です。
チャートの表示期間を、長くしてみましょう。1993年以降です。

まるで、反比例のグラフのようです。1993年の為替レートは9,000と表示されていますが、現在は20にも満たない数字です。
さすがにこれだと、塩漬け覚悟でポジションを持っても、辛いものがあります。
塩漬けの効果 まとめ
以上、塩漬けについて考察しました。基本的には、含み損の期間は短い方が良いです。よって、買うならば、できるだけ安い位置で買いたいです。
そして、スワップポイントの支援を受けながら、長期で勝利を狙います。
塩漬け覚悟のトレードでも勝ちトレードにする条件を、下にまとめます。
- 短期でなく、長期(年単位)
- 含み損になっても、ポジションをずっと持つ
- スワップポイントは、継続的にプラスであること
- 円高一辺倒の通貨ペアで取引しない
将来の値動きは、誰にも分かりません。よって、(繰り返しになりますが)少しでも安い位置で買って、塩漬けを回避しましょう。
可能なら、塩漬けは回避したい
今まで、塩漬けの効能を考察してきました。結果、全くダメな方法というわけではありません。時間さえかければ、連戦連勝さえ可能です。
しかし、可能なら、避けた方が良い手法でもあります。それは、「勝ちトレードにする条件」で書いた内容が、少々厳しいからです。
条件
含み損になっても、ポジションをずっと持つ
例えば、米ドル円=110円で買った後に、75円の歴史的円高になったとしましょう。この場合、35円(3,500銭)の含み損です。
取引数量と含み損の関係は、下の表の通りです。
米ドル/円保有数 | 含み損 |
---|---|
1万通貨 | 35万円 |
5万通貨 | 165万円 |
10万通貨 | 350万円 |
この含み損になっても、毎日そのまま過ごす必要があります。スワップポイントを期待するとはいえ、精神的に苦しい日々になるかもしれません。
もう一つの条件も、厳しいです。
・条件
スワップポイントは、継続的にプラスであること
一見すると、もっともなことを書いています。しかし、将来のことについて書いています。スワップポイントが今後も継続的にプラスかどうかというのは、事前に分かりません。
過去の推移を見れば、今後もプラスだろうと予想できるというだけです。
よって、何らかの理由でマイナスに転換してしまうと、含み損とスワップ損で二重に苦しくなります。
さらに…
・条件
円高一辺倒の通貨ペアで取引しない
こちらも、将来のことについて書いています。
長期的にレンジになっている通貨ペアを買ったとします。そして、塩漬けになりました。しかし、将来の値動きは分かりません。
塩漬けにして耐えていたら、長期的なレンジを外れて円高になり、含み損がさらに増えて困った!という事態もあり得ます。
塩漬けの考察結果
以上の通り考察しますと、塩漬けは積極的に狙うものではなく、どうしようもない時の苦肉の策だという理解で良さそうです。