FXにおいて「証拠金」という単語は、いくつもの使い分けがあります。
- 証拠金
- 有効証拠金
- 必要証拠金
- 証拠金維持率
それぞれ意味が異なりますので、この記事で確認しましょう。なお、FX業者によっては、保証金という表現をします。どちらを使っても同じ意味です。
証拠金についてわかりやすい解説が見たい方は、こちらの動画で30秒ほどで解説しているので一度ご覧ください。
取引するために必要な資金(証拠金)
FXをするには、FX業者に口座を開設します。そして、一定のお金を担保として入金します。この担保金は「証拠金」「保証金」と呼ばれます。
日本では、証拠金の25倍(レバレッジ25倍)までの金額で取引可能です。下の絵は、レバレッジが10倍の例です。
有効証拠金とは
有効証拠金とは、現在の残高に評価損益を加えた額です。
有効証拠金 = 証拠金残高 + 評価損益
例えば、100万円を入金したとしましょう。そして、トレードの結果、10万円損したとします。しかし、別途保有中のポジションは、含み益が20万円です。
この場合の有効証拠金額は、以下の通りです。
有効証拠金の計算
100万円 - 10万円 + 20万円 = 110万円
すなわち、含み損益によって金額が変化することが特徴です。
有効証拠金の扱い方
有効証拠金は、資金管理という面では少々扱いづらいです。
と言いますのは、今日の有効証拠金は100万円だったのに、1週間後は70万円に減っていたり、逆に150万円まで増えていたりするからです。
例えば、FXで取引する場合、レバレッジは2倍以内にしようと決めたとします。今の証拠金は100万円で、200万円分買いました。
- 含み損になる場合:レバレッジは2倍を超えてしまいます。
- 含み益になる場合:レバレッジは2倍よりも小さくなります。
例えば、「含み損」が20万円になったとしましょう。すると、有効証拠金は80万円に減りますが、200万円分買ったというのは変わりません。
このとき、レバレッジは2.5倍になります(200万円 / 80万円 = 2.5)。
逆に、「含み益」が20万円になったとしましょう。有効証拠金は120万円に増えますが、200万円分買ったというのは変わりません。
このとき、レバレッジは1.67倍になります(200万円 / 120万円 = 1.67)。
含み損益がどうなるか、それは相場に聞くしかありません。事前に把握するのは無理です。その数字を基準にするのは、心もとないでしょう。
よって、有効証拠金は、レバレッジ管理よりも「今すぐ全ポジションを決済したら、いったいいくら出金できるのか?」といった目安を知る方法として使うことが、多くなるでしょう。
また、強制ロスカット基準としても使われます。
必要証拠金とは
必要証拠金とは、取引を始めるために最低限必要な資金のことです。
例えば、米ドル/円が100円のときに、1万通貨買うとしましょう。投資額は100万円です。レバレッジは25倍まで認められていますので、100万円を25で割ります。
結果、4万円が必要証拠金となります(4万円の25倍は100万円です)。4万円以上あれば、1万通貨買えます。
ただし、必要証拠金というのは、取引するために最低限必要な額というだけです。
よって、25倍のレバレッジで買ったとたんに円高に動く場合、すぐに強制ロスカットになる可能性がありますので、注意が必要です。
ポジション保有中の必要証拠金
なお、この必要証拠金ですが、ポジション保有後も随時変化するルールにしているFX業者が多いです。
例えば、1ドル100円のときに、1万通貨買ったとします。この時の必要証拠金は、4万円です。その後、1ドル90円まで円高になった場合、既に保有しているポジションについても、必要証拠金が変化します。
90円×10,000通貨×4%=36,000円
当初は4万円必要だったのですが、3.6万円に減少しました。含み損なので面白くないですが、4,000円分だけ、資金に余裕ができました。
この変化ですが、リアルタイムのFX業者もありますし、そうでない場合もあります。
高レバレッジで回転売買する場合、この差を確認しておくと良いかもしれません。低レバレッジで運用する場合は、あまり必要のない知識と言えそうです。
証拠金維持率とは
4つ目の、証拠金維持率を確認しましょう。
証拠金維持率 = (純資産額 / 必要証拠金) × 100(%)
証拠金維持率が大きくなるのは、以下の場合です。
- 口座残高(証拠金)が大きくなる
- 含み益が大きくなる
- 必要証拠金が小さくなる(ポジション数量が少なくなる)
ということは、この数字が大きければ大きいほど、安全度も高いということになります。レバレッジとの関係は、以下の通りです。
証拠金維持率 | レバレッジ |
---|---|
2,500% | 1倍 |
1,250% | 2倍 |
500% | 5倍 |
250% | 10倍 |
100% | 25倍 |
証拠金維持率とレバレッジの危ない関係
証拠金維持率とレバレッジの表を見ますと、あることに気付きます。
レバレッジが1倍から2倍になるとき、証拠金維持率は2,500%から1,250%に減ります。その差は、1,250%です。レバレッジが2倍から10倍になるとき、1,250%から250%に減ります。その差は1,000%です。
FXを始めた当初、誰もが警戒しながら取引をしますから、レバレッジを1倍にするかもしれません。慣れてきて、ようやく取引数量を2倍にします。
レバレッジを2倍にしたら、証拠金維持率は1,250%になります。
さらにFXに慣れてきて、多額のポジションを持ったところ、証拠金維持率は250%になったとします。
「レバレッジが1倍から2倍になった時、1,250%減った。今回は1,000%減っただけだから、意外にレバレッジは低いかも?」
という錯覚に陥らないように注意しましょう。この時、実際のレバレッジは10倍になっています。
取引時における証拠金の変化事例
では、取引例を見ながら、今まで見てきた項目がどのように変化していくか、確認しましょう。
取引例
- FX口座に100万円を入金
- 米ドル/円=100円のときに、2万通貨の買い(レバレッジ2倍)。含み損益はゼロです。
- その後、米ドル/円=90円になりました。含み損益は△20万円です。
- さらに保有を続けたところ、米ドル/円=110円になりました。含み損益は+20万円です。
- 利食いの決済をしました。
以上の場合、それぞれの数字はどのように変化するでしょうか。下の通りです。
証拠金残高 | 有効証拠金 | 必要証拠金 | |
---|---|---|---|
①入金時 | 100万円 | 100万円 | 0万円 |
②購入時 | 100万円 | 100万円 | 8万円 |
③含み損時 | 100万円 | 80万円 | 7.2万円 |
④含み益時 | 100万円 | 120万円 | 8.8万円 |
⑤決済時 | 120万円 | 120万円 | 0万円 |
必要証拠金は、為替レートの上下動によって変動しています。
なお、為替レート変動に関わらず、取引開始時の必要証拠金がそのまま維持されるというFX口座もあります(少数派です)。この場合、以下の通りとなります。
必要証拠金 | |
---|---|
①入金時 | 0万円 |
②購入時 | 8万円 |
③含み損時 | 8万円 |
④含み益時 | 8万円 |
⑤決済時 | 0万円 |
最後に、証拠金維持率を確認しましょう。為替レート変動に伴って必要証拠金が変動する場合、維持される場合の2ケースあります。
必要証拠金が変動する場合 | 必要証拠金が維持される場合 | |
---|---|---|
①入金時 | ― | ― |
②購入時 | 1,250% | 1,250% |
③含み損時 | 1,250% | 1,000% |
④含み益時 | 1,250% | 1,375% |
⑤決済時 | ― | ― |
どの数字を使って資金管理をするかについては、読者の皆様のお好みで選びます。最も分かりやすいと感じる方法が、良いでしょう。