移動平均乖離率(いどうへいきんかいりりつ)とは、オシレーター系のインジケーターの一種です。
すなわち、相場は高すぎるから今後は下落だ、あるいは、相場は安すぎるから今後は上昇だ、と示唆してくれます。
そこで、このインジケーターの使い方や注意点を確認しましょう。
【FXチャート分析】移動平均乖離率とは
移動平均乖離率とは、基準となる移動平均線と比べて、現在の為替レートはどれくらい離れているか(乖離しているか)?を示す指標です。
計算式は、以下の通りです。
(現在の為替レート)÷(移動平均値)-1
例えば、現在の為替レートが101.00円、そして25日移動平均の最新の値が100.00だとします。この場合の移動平均乖離率は、0.01(1%)です。
(101÷100)-1=0.01(1%)
【FXチャート分析】移動平均乖離率の意味
では、この移動平均乖離率に何の意味があるのか?です。数字を眺めていてもイメージできないので、実際のチャートを見てみましょう。
下は、米ドル/円の日足チャートです(マネーパートナーズから引用)。
上側にローソク足チャート、下側に移動平均乖離率を表示しています。ローソク足に表示しているインジケーターは、25日移動平均線です。
為替レートは、移動平均線に絡みつくように動いています。
すなわち、為替レートは移動平均線から離れる方向に動いても、時間が経過すれば、いずれは移動平均線の位置まで戻ってきます。
これは、上のような通常時の場合に限らず、相場が大きく動く場合も同様です(下のチャート)。
すると、「為替レートが移動平均線から大きく外れたら、移動平均線の方向に戻ると期待してトレードできるのでは?」という案が出てきます。
これを実現するためのインジケーターが、移動平均乖離率です。
【FXチャート分析】移動平均乖離率のトレード手法
移動平均乖離率を使ったトレード手法は、いくつかあります。最も分かりやすいのは、「移動平均乖離率が(上または下に)大きくなったら取引」です。
下のチャートで確認しましょう。
売買のポイントとなる部分に丸を付けたのが、下のチャートです。赤丸で買い、青丸で売りです。
このチャートを見ると、「なるほど」と感じるかもしれません。しかし、それは為替レートの動きを後から見ているからです。
実際のトレードは、これからどう動くか分からない為替レートに対して、判断します。この場合、丸部分で取引を始めるのは難しいです。
上のチャートの場合、移動平均乖離率が+2%または-2%くらいになったら取引するというイメージです。
ところが、下のチャートの場合、2%で取引を始めたら、大損になる可能性があります。
赤丸部分の移動平均乖離率は、およそ+2%くらいです。ここで売った場合、為替レートはどんどん上昇していきました。
どこかで損切りしないと、損失が大きくなってしまいます。
問題は、「移動平均乖離率がどこまで大きくなったら相場が反転するか、事前に決められない」ということです。これが決められないと、トレードできません。
そこで、何か工夫が必要になります。
移動平均乖離率のトレード手法【修正】
修正版のトレード手法として、2つご案内します。
トレンド相場
下は、下落のトレンド相場です。これで移動平均乖離率を使ってみます。
下のチャートを見ますと、赤丸部分で為替レートが反落してトレンドになっていることが分かります。
そこで、再び同じ位置に来たら(矢印部分)、売りを狙います。
ただし、青丸を見ますと、結果として下落に転じているものの、他の赤丸と比べて下落に転じる位置が異なります。
矢印部分で取引を開始する際、青丸と同じような値動きになると面白くありません。そこで、為替レートが下落したことを確認してから売ります。
決済ポイント
取引を開始したら、次は決済です。
- 損切り位置:直近高値を上回ったら
- 利食い位置:損失の値幅よりも、大きな利食い額になるところ
損切りポイントは、比較的分かりやすいです。
為替レートはジグザグと動きながら下落(または上昇)する例が多く、為替レートが直近の高値を上回った位置で損切りです。
一方、適切な利食い位置を見つけるのは、難しいです。「利小損大」にならないように気を付けながら、可能な範囲で利を伸ばします。
利小損大とは、利食い額が小さく、損切り額が大きいという意味です。利小損大で最終的に資産を増やすには、高い勝率が必要になります。
利小損大だと、高い勝率で資産を徐々に増やしても、1回の損切りで資産を大きく減らすことになります。精神的にもダメージが大きくなりがちですので、注意が必要です。
ダイバージェンス
もう一つのトレード手法は、ダイバージェンスです。
ダイバージェンスとは、ローソク足のトレンド方向とインジケーターのトレンド方向が逆転している現象を言います。
上のチャートで、ダイバージェンスが出ています。矢印を追加した下のチャートの通りです。
チャート中ほどで、ローソク足のトレンドは下落です。移動平均線も右肩下がりになっています。しかし、移動平均乖離率は、上昇に転じています。
これは、その後の相場の上昇を示唆すると言われます。
では、具体的にどこで取引を開始して、どこで決済するか?です。複数の方法があります。以下、買いの場合を想定します。
取引開始ポイント
- ポイント1:為替レートの終値が移動平均線を上回ったとき
- ポイント2:為替レートの終値が移動平均線を上回ったあと、押し目を付けたとき
下のチャートは、上のチャートの真ん中あたりを拡大したものです。このチャートで見ていきましょう。
ダイバージェンスが発生した後、為替レートが上昇して、終値が移動平均線を下から上に抜けました(矢印1)。ここで買う方法があります。
分かりやすい方法ですが、デメリットがあります。
その後も下落が継続し、赤破線のように動いてしまう可能性です。今まで下落トレンドで動いてきたのですから、こうなっても不思議はありません。
そこで、矢印2部分で買うという方法が出てきます。
すなわち、為替レートが終値で移動平均線を上方向に抜けた後、小さな下落を待ちます。その下落後に上昇を始めた部分で買うという方法です。
この小さな下落を「押し目(おしめ)」と言います。
仮に下落トレンドが継続するなら、為替レートは押し目を作らずに下落する可能性があります。押し目を作ったのだから、移動平均乖離率の示唆は信頼できるだろう、という考えです。
どちらが良いか?ですが、確実度が高いのは矢印2で買う方法です。しかし、これといった押し目を作らないまま、一気に上昇する場合もあります。
これが難しいところですが、これを受けて折衷案を作ることもできます。
すなわち、「赤矢印1部分で、買いたい数量の半分だけ買い、残りの半分は、矢印2で買う」という方法です。
唯一絶対の方法は存在しないので、自分にとって最も分かりやすい方法を考えることになります。
損切り位置
取引を開始するにあたって、損切り位置も決めます。損切り位置は、比較的決めやすいです。上のチャートで「損切り」と書いてある横線の部分です。
(下は再掲です。)
すなわち、直近安値の少し下あたりで損切りします。
この理由ですが、為替レートが直近安値よりも下方向に進んだら、まだ下落トレンドは終わっていないという意味だからです。
下落トレンドで買いポジションを持っていたら、損してしまいます。そこで、損切りします。
利食い位置
利食い位置は、特に決まった場所がありません。自分のお好みで、ということになります。ただし、「利小損大」にならないように注意が必要です。
下は、利食い位置の例です:
- 例1:取引開始後、為替レートが移動平均線を下回ったら決済
- 例2:取引開始レート×1.01の為替レートで利食い(利幅1%)
パラメーターの値
最後に、移動平均乖離率を使って取引するには、パラメーター(変数)はいくつにすれば良いか、確認しましょう。
パラメーターを分かりやすく書くなら、〇日移動平均線の〇に、どんな数字を入れるべきか?ということです。
上のマネーパートナーズのチャートでは、25日移動平均線を使っています。マネーパートナーズのデフォルト値が25だったためです。
FX各社のデフォルトの数字は、以下の通りです。
- DMMFX:25
- マネーパートナーズ:25
- トライオートFX:25
- セントラル短資FX:21
- FXプライムbyGMO:21
- みんなのFX:7
特定の数字に統一されていないものの、21または25が多いです。よって、移動平均線を考える場合、まずこのあたりの数字を使って検証するのが候補になります。
その後、様々なパラメーターを試していきます。
FX会社のパラメーターが21~25に集中していますので、移動平均乖離率を使う多くの顧客は、この数字周辺で取引していると予想できます。
すなわち、取引開始ポイントが、多くの顧客で一致する可能性があります。
多少なりともトレンドを作る原因になりうるので、そのチャンスに乗っていこうという意図です。
デフォルトのパラメーターで期待通りのトレードができない場合に、別の数字で検証します。