欧州連合(EU)加盟国は、現在27ヶ国です。そのうち、ユーロを採用している国は19ヶ国あります。
外国為替市場では、アメリカのニューヨーク市場を凌いで、ロンドン市場が世界一のシェアを誇っています。
そこで、ユーロ圏を経済の面から概観してみましょう。
ヨーロッパ・ロンドン市場についてはこちら↓↓↓
参加19か国のユーロ圏
最初に、ユーロ圏を構成する国を確認しましょう。全部で19あります。
海外旅行するのに両替しなくてよいのですから、とても楽です。少しでも有利な時に両替するぞ!と気合を入れる必要がありません。
それは、企業活動でも同じことです。ユーロ圏内だったら、輸出・輸入するときの為替差損を考えなくて良いのです。
これは、企業活動にとってとても有利に働くことでしょう。
EUとユーロ
欧州のニュースに接していますと、EUとユーロという言葉が頻繁に出てきます。2016年には、イギリスで国民投票が実施され、イギリスはEUから離脱することが決まりました。
紆余曲折の末、2020年1月31日に正式に離脱しました。このEUとユーロの違いについて、簡潔に確認しましょう。
イメージ図は、下の通りです。
EUの目標は、加盟国の国家主権の一部をEUに渡して、加盟国の政治的・経済的統合を進めていくことです。その中の通貨部分の統合が、ユーロです。
この2つは強い関連がありますが、同一ではありません。よって、EU加盟国数(27か国)とユーロ採用国数(19か国)で違いが出ています。
イギリスは、かつてEUに加盟していましたが、ユーロは採用しませんでした。よって、私たちは、ポンド/円やポンド/米ドルなどの取引を楽しむことができます。
仮に、イタリアがユーロを採用していなかったとしたら、私たちはイタリアリラ/円の取引を楽しむことができたでしょう。
ユーロ加盟国のGDP比較
では、ユーロ加盟国の話に移りましょう。加盟国の2019年のGDPを比較しますと、以下の通りです(World Economic and Financial Surveysの公開データを基に作成)。
加盟国のGDPが大きい順に、並べてみます(合計で100%)。
- ドイツ 27.9%
- フランス 19.2%
- イタリア 15.4%
- スペイン 12.1%
- オランダ 6.3%
- ベルギー 3.6%
- オーストリア 3.0%
- アイルランド 2.6%
- ポルトガル 2.2%
- ギリシャ 2.0%
- フィンランド 1.7%
- スロバキア 1.2%
- リトアニア 0.6%
- スロベニア 0.5%
- ルクセンブルク 0.4%
- ラトビア 0.4%
- エストニア 0.3%
- キプロス 0.2%
- マルタ 0.1%
各国がユーロ圏に属するということは、金融政策の権限を欧州中央銀行(ECB)に渡すということです。
すなわち、自国の都合で政策金利を引き上げたり引き下げたりできませんし、通貨供給量の調節もできません。
上のGDP比率を見ますと、ドイツが他国を圧倒しています。すなわち、経済指標におけるドイツの影響度が大きくなります。
すると、極端な表現をするなら、「ドイツが好景気ならユーロ圏も好景気、逆に、ドイツが不景気ならユーロ圏も不景気」と判定されやすくなります。
ユーロ圏全体におけるGDP比率が低い国にとっては、厳しい場面があるかもしれません。
2010年代前半のユーロ危機
2020年代に入った今、ギリシャを始めとした財政危機は過去のものになったような印象さえありますが、まだ終わっていません。
そこで、簡潔に内容を確認しましょう。
2008年のリーマンショック後、米国だけでなく世界中が不景気になりました。すると、ユーロ加盟国に課せられた財政基準を守れない国が出てきました。
具体的には、ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインです。各国の頭文字をつなげてPIIGSなどと呼ばれたりしました。
ギリシャ問題
ギリシャに至っては、事態が深刻でした。ユーロに加盟する際に、国の財政状況を報告して審査を受けるのですが、粉飾決算をしていたことが明らかになったためです。
すなわち、加盟条件を満たしていないのにユーロに加盟したことになり、2010年代の強烈な不景気も加わって、どうしようもないという状態になりました。
結局、ギリシャは強烈な緊縮財政を採用して、ユーロ圏にとどまりましたが、財政問題が完全に解決したわけではありません。
まだ火種はくすぶっています。
この状況ですから、当時、PIIGS諸国は大ピンチ。金融緩和を劇的に進めたいところです。しかし、ドイツにとっては金融緩和が行き過ぎて困る、という事態が発生したようです。
ユーロ圏における、両国のGDP比率を再掲します。
- ドイツ:27.9%
- ギリシャ:2.0%
GDPの重要度にこれだけの差があると、ドイツを重視して金融政策を策定せざるを得ません。欧州中央銀行(ECB)は、難しいかじ取りを強いられたことでしょう。
ユーロ圏の経済指標とデイトレード
ユーロを含む通貨ペア、例えば、ユーロ/円のデイトレードをするとしましょう。デイトレードで厄介なのは、経済指標発表です。
経済指標発表の結果、自分の期待通りの値動きになる場合もありますし、その逆の場合もあります。
重要な経済指標発表後、為替レートは瞬時に動く傾向があります。また、スプレッドも開く傾向があります。よって、一般的には、厄介な存在でしょう。
ところが、ユーロ加盟国が19か国もあると、経済指標は全部で20か国・機関になります。
- ユーロ圏全体の経済指標
- 19か国の経済指標
経済指標発表が重要だからといって、これらすべてをチェックする時間や気力はないでしょう。
実際のところ、チェックしてもあまり意味はありません。短期的に為替レートに影響を与える指標は、比較的限られているからです。
では、どれが重要なのか?ですが、例えばECBの政策金利発表です。あるいは、ユーロ圏全体の消費者物価指数などです。
特定の国に市場関係者の注目が集まっている場合は、その指標も重視します。
チェックする経済指標をこのように限定的にすると、デイトレードの取引がやりやすくなるでしょう。
ユーロ圏周辺国の通貨と円
ここで、ユーロ圏周辺にある、経済が比較的小規模な国の通貨ペアを見てみましょう。
- ノルウェークローネ/円
- スウェーデンクローナ/円
- ポーランドズロチ/円
これらの通貨ペアは、比較的似たような動きをする傾向があります。その理由を考えましょう。
それぞれの国の位置は、下の地図の通りです。
A:ノルウェー
B:スウェーデン
C:ポーランド
地理的な条件から予想できますが、これらの国はユーロ圏の影響を強く受けます。経済規模で比較すると、圧倒的にユーロ圏が大きいです。
ポーランドについては、ユーロ圏に加盟しようとしていました(2020年時点で、手続き休止中)。
すると、金融政策等もユーロ圏の影響を強く受けることとなり、為替レートも似たような動きになります。
実際の月足チャートを見てみましょう。みんなのFXからの引用です。
ノルウェークローネ/円【月足チャート】
スウェーデンクローナ/円【月足チャート】
ポーランドズロチ/円【月足チャート】
この3つの国は、別々の国です。よって、為替レートの動きは全く同じというわけではありません。
しかし、円安や円高になるタイミングや、全体的な形状が似ていることが分かります。
上のチャートは、月足です。月足で似ているなら、週足や日足でも似ている場面がいくつも出てくるでしょう。その傾向を分析すると、面白い特徴が見つかるかもしれません。
見つかれば、それがトレードチャンスになります。